投資と資産運用の
基礎を知ろう

これからの時代に賢くお金と付き合っていくには、投資は避けて通れないというのはしばしば耳にする話。でもそもそもなぜ投資が必要なのか? 最初の一歩はどうやって踏み出せばいいのか……? 大和住銀投信投資顧問のアナリストとして金融業界に身を置く福井悠香さんが、基礎知識を授けてくれました。

「この中でアルバイトをしているという学生さんは多いはず。そのアルバイトで今月は10万円入るとします。そのお金を皆さんはどうしますか?」

そんな質問から始まった福井さんの授業。話は身近なところから、投資の考え方へと広がっていく。

「いちばん多いのはお金をそのまま貯める、預貯金でしょう。一方ほかにも手段があり、それが“投資”と“投機”です。ざっくりといえば、投機では短期間での一攫千金やランダムな幸運を狙うこと。たとえば、10人が10万円の参加料を払って参加し、2人が勝者になって50万円ずつ分け合うゲーム。2人は多額のお金が入ってくるわけですが、あとの8人はなにも残らないですよね。こうした偶然のチャンスに賭けるものなんです。これに対して、投資はなにかというと、10人が10万円ずつ出し合った元手の100万円で商売をして110万円にする。その増えた10万円分を参加者全員で分け合うんですね。もちろん損失が出た場合はそれを分け合うということにはなります。これが投資なんです。投資には株式や債券投資と呼ばれるものがあり、投機ではギャンブルや宝くじなどが考えられます。今日はこの投資に焦点を当ててお話ししていきましょう」

なぜこれからの時代に、単にお金を貯めていく預貯金だけではなく、“投資”を視野に入れなくてはならないのか。福井さんが示したのは直近30年ほどの10年国債の利回りの推移グラフ。1990年頃には8%を指しているそのグラフは、緩やかに右肩下がりを描き、2016年には0%の底を打っている。
「超低金利時代に突入し、預貯金ではお金はほぼ増えなくなりました。その反面、この10年間ほどインフレ率は上昇している。つまり物価が上がってきているんです。そうするとどうなるか? 持っているお金の“価格”は一定であってもその“価値”は下がっていきます。預貯金だけに頼っていると、資産は実質的に目減りする。だからこそ、増やすための選択肢として投資が必要となってくるのです」

安倍政権が掲げる物価上昇率目標は年2%。仮に手元に100万円があって、この年率で物価が上昇していくと、同じ100万円の価値は10年後には約82万円、20年後には約67万円へと目減りし、30年後には約55万円とほぼ半分にまで下がってしまうそう。さすがにどきっとするような数字ではないか。

積極的に投資を考えていくことが、スマートなお金との付き合い方の鍵となることは納得できた。では、株・債券・不動産・外貨など、それぞれ数多ある投資から何を選べばいいのだろうか?

「投資資産を選ぶときには、預けたお金が目減りしたり損をしたりする必要がないかという①安全性、どのくらいの利益が見込めるかという②収益性、必要なときに現金化しやすいかという③流動性の3つを軸として判断します。この3つ全てを兼ね備える金融商品は、残念ながらありません。特に安全性と収益性は表裏一体の関係にあり、リスクが大きいほどリターンの可能性も大きく、逆もまたしかりです」
リスクとリターンの大小をXY軸にしたチャートがとてもわかりやすい。リスク・リターンともに極端に高いものの例としてビットコインが、次いで高いものとして株式、為替、投資信託、債券などが並んでいき、リスク・リターンともに低い位置には預貯金が置かれる。

「これが絶対にいいという投資先はないんです。大切なのは、それぞれの資産がチャートのどこにあるのかという特性を理解して、自分の投資の目的や、人生設計にマッチする金融商品を選ぶことですね」

万能な投資先はないとしても、リスクはなるべく低くしたいし、リターンはなるべく高くしたい……。それができれば投資への一歩も踏み出しやすそうに思えるが、投資の世界でよく引き合いに出される格言があるのだと福井さんは続ける。
「私自身もとても納得できる格言なのですが、“Donʼt put all your eggs in one basket”とよく言われます。すべての卵をひとつのカゴに入れるな--ひとつだと、万が一そのカゴを落としたら卵は全部割れてしまう。でも、いくつかのカゴに分けておけば、割れる卵は一部で済む。同じように投資も色々なカゴ、すなわち色々な資産に投じていれば、一つの資産にダメージがあっても全体に与える影響は小さいということです。さまざまな資産を組み合わせることで、リスクを抑えつつ、リターンを最大化することはできる。この組み合わせを金融用語で“ポートフォリオ”と言います」

要点をおさえながら進んでいく明快な福井さんの授業。投資への興味も理解も、ぐっと一歩進んだ感覚だ。

「職業柄、これぞという金融商品は何ですかとよく聞かれますが、本当に人それぞれ」としつつも、興味を持ち始めた人への一つの選択肢として、NISA(少額投資非課税制度)や、2018年の1月からスタートしたつみたてNISAが紹介された。

「1年間の投資金額に上限があるものの、投資で発生した利益に税金がかからないのは、大きなメリット。こうした制度をうまく活用しながら、投資への第一歩にしてみてはどうでしょうか」
講師プロフィール
福井 悠香(ふくい ゆうか)
2013年に大和住銀投信投資顧問に入社。運用企画部を経て、企業調査部へ。ファンドマネージャーチーム専任アナリストとして中小型株をメインに幅広い業種を担当。現在は情報通信サービスその他セクターを中心に市場調査・分析を行っている。
トップに戻るBack to Top