超高齢社会の
お金って?

言うまでもなく、お金の動きやその価値は、社会の動向に大きく左右されるもの。それでは日本社会の重大な課題のひとつである“少子高齢化”は、お金とどのような関わりを持つのだろう? 早くからこのトピックに着目し、超高齢社会の資産形成のあり方を啓蒙してきた野尻哲史さんが、思考の種を撒いてくれました。

「65歳以上の人口が全人口の7%を超えるのが高齢化社会。その倍の14%超で高齢社会、21%超を超高齢社会と呼びます。日本はすでに2007年頃には超高齢社会となりましたが、さらに今後はどのように推移していくのか。この表から何が読めますか?」

そう学生に呼びかける野尻さん。指し示しているのは、2015年から2065年までの50年間にわたる人口推計表だ。人口総数、0~19歳、20~64歳、65歳以上、75歳以上という各年代別の人数や総人口に占める割合などが羅列されている。
・この50年間で人口総数は約1.3億人から約8.8千万人まで、4千万人ほど減少する。
・2015年時点で人口に占める65歳以上の割合(26.6%)は、2065年時点での75歳以人口上の割合(25.5%)と拮抗する。
・この50年間で総数が大きく減少するのは0~9歳人口と、20~64歳人口。65歳以上の人口数には大きな変化はない。
学生の手が挙がり、いくつもの読解がなされる。今後の半世紀で日本の総人口は約30%も減少するという衝撃的な事実も含め、一枚の表が包含する社会の課題の多さに驚く。
「65歳以上の人口率が4割に迫る、世界のどこも経験したことのない超超高齢社会が確実なものとして見えている。その時代を国として個人としてどのように生き延びるかは、かなり深刻な課題です。現在のように60~65歳で仕事を引退するとしたら、そこから先の人生を年金で支えられるのか。あるいはそれが心もとないならばどのように備えておくべきか。シビアに考えておくべきですね」

平均寿命は伸び、高齢者を支える労働人口は減少する……。いかにも心もとない未来の社会を思うと、湧き出てくるのは不安ばかりだが、だからこそ投資や資産形成への意識が重要になってくる。

現在の日本の個人金融資産は実に1800兆円。その約2/3が60歳以上に集中していることを示す年代別に保有する資産額の表、個人金融資産の内訳、過去30年にわたる日米英の個人金融資産の動向……。次々と繰り出されるチャートやグラフから、いくつものことが明らかになっていく。

「欧米に比して日本は、個人の資産における預貯金の割合が圧倒的に高い状態が長く続いています。同じく欧米に比して個人資産の増加率が低い理由のひとつは、資産内訳が預貯金に偏って投資をしてこなかったことにあることも、グラフから類推することができる。2001年に小泉内閣が“貯蓄から投資へ”というスローガンを打ち出しました。 “投資”と“投機”が混同され、投資はリスクの高いものという偏った意識がまだまだ強いこともあり、現在では“貯蓄から資産形成へ”という言葉がよく使われます。単に貯蓄を投資に回すのではなくて、収入の一部を貯蓄に、一部を投資に回すことで、個人の金融資産を増やすことを考えるべきだ、ということですね」

投資を含めた資産形成を人々に啓蒙する野尻さんも、収入の一部を貯蓄に、一部を投資にというスタイルを長く続けていると話す。
「儲かりますか? とよく聞かれるのですが、うんと儲かっていますと答えますね(笑)。こういう仕事をしているのだからそうあるべきだと思いますし。一つ言えるのは、“資産形成が本業の仕事の邪魔をしちゃダメ”ということ。要所要所でマネジメントはすべきですが、普段はやっていることを忘れてしまえる投資がいいと思いますね。株式、投資信託、為替、不動産……といろんな投資があるけれど、“自己投資”も忘れないでください。自分を真に豊かにしてくれるものです」
講師プロフィール
野尻 哲史(のじり さとし)
国内外の証券会社調査部を経て、2007年よりフィデリティ退職・投資教育研究所所長を務める。主に個人投資家の資産運用に関するアドバイスを行う。ほか、各種アンケート調査をもとに投資家動向を分析し、資産運用に関する啓蒙活動も行っている。近著に『定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法』(講談社)など。
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